新しき古典
伊東静雄の詩の世界


諌早公園内の文学碑


長崎県諫早いさはや市出身の詩人・伊東静雄の詩作
品を後世に継承していくために、詩人の生涯
、詩作品等の紹介を故郷・諫早の地より
発信します。

開設者:伊東静雄研究会 責任者:上村紀元
長崎県諫早市原口町1054−2



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そんなに凝視めるな

そんなに凝視(みつ)めるな わかい友
自然が与える暗示は
いかにそれが光耀にみちてゐようとも
凝視(みつ)めるふかい瞳にはつひに悲しみだ
鳥の飛翔の跡を天空(そら)にさがすな
夕陽と朝陽のなかに立ちどまるな
手にふるる野花はそれを摘み
花とみづからをささへつつ歩みを運べ
問ひはそのままに答えであり
耐える痛みもすでにひとつの睡眠(ねむり)
風がつたへる白い稜石(かどいし)の反射を わかい友
そんなに永く凝視(みつ)めるな
われ等は自然の多様と変化のうちにこそ育ち
あゝ 歓びと意志も亦そこにあると知れ
 
「そんなに凝視めるな」は昭和14年「知性」12月号に発表された。
[手にふるる野花はそれをつみ 花とみづからをささへつつ歩みを運べ」は、伊東静雄の詩観を表現する好個のものとして、昭和29年11月、郷里諫早公園の詩碑建立に三好達治の筆で刻まれている。